メメント・モリ

コーヒーに入れると、まろやかになるでしょ。

やさしいひと

「人間として優しい人にならないといけないと思っていて。そうじゃないと、美しくないし、悲しいじゃないですか。」
with 2020年 2月号より


忘れ物の癖を指摘された佐藤龍我くんが「それは秘密!」と言いながらその日も現場に私物のポーチを忘れていったらしい(ペロすぎ)その雑誌記事にて、岩崎大昇くんはこんなことを言っていた。





わたしは優しくなりたかった。


「もっとずなくならないとやっていけないよ!」


数年前、毎日泣いていた(ガチ)(迷惑すぎ)わたしに所謂お局がこう言った。

社会人になってから、それまでポヤと生きてきたはずのわたしは何故かブチ切れマシーンとなってしまっていた。今思えば、最大級の実にありがたい助言である。その通り過ぎる。けれど、たくさんの理不尽にわたしは怒っていた。

その時はじゃあこの環境を何とかしろやと心の中は常に大噴火で避難警報が出ていたし、そんな自分を自分で立ち入り禁止区域に放り込み、誰も寄せ付けないことでなんとか日常を保っていた気がする。

まず「ずない」ってなにと思った。聞いたら「図太い」という意味らしかった。
は~~~?????標準語を使えや!!!(?)とそこでまたブチ切れたし、本当に、そんな些細なことで毎日毎時間毎分毎秒わたしは怒っていた。


けれど同時に、ひとしきり怒り狂った後はものすごくしにたくなった。どうしてもっと穏やかにニコニコと平和に生きられないんだろうと何度も自分を心の中で刺した。

それでも生きていくしかないので、心の中で解体した自分をまた積み木のように積み上げて意地という名の針と糸でそれらをつなぎ合わせて、毎日を過ごした。

優しくなりたい。心穏やかに生きたい。
そのためには強くなろう、もっともっと強くなろう。
そうすれば、そうやって強くなればこころに余裕が出来る、穏やかになれる、きっと、優しくなれる。


そうして何度も針と糸で再形成されたわたしは無事強くなった。けれど、いちばん欲しかった優しさはついてこなかった。
怒りと当てつけのような気持ちを原動力にしていたのだから、当然の結果だった。


「前はこんなじゃなかったのに、すぐ怒ってしまいます。どうしたらいいでしょうか?」

「『前はこんなじゃなかった』はずはなく、貴方は本来そういう性質だったというだけではないでしょうか。」


行きつく場所がなく、ヤ〇ー知恵袋(笑)に相談(笑)(笑)したわたしはその回答に思わず笑ってしまった。そして、どこの誰かも知らない根拠もないその回答に妙に納得してしまった。


それならばもう、無理じゃないか。

そうしてわたしはお礼のたった500コインを代償として、なりたかったわたしになることを諦めた。守りたいものなんて何もないのに、外壁ばかりが頑丈となったわたしは、今も立ち入り禁止区域の看板を下げられずにいる。




優しくないと、美しくない。
優しくないと、悲しい。
そうじゃないと、優しくないと、美しくないし、悲しいじゃないですか。


弱冠17歳の彼から発せられたそんな言葉を浴びて、わたしは何を言うことも出来なかった。

その当時、わたしはきっと怖くて、悲しかったのだ。
制御できない怒りに包まれている自分が。この怒りが誰かを傷つけているかもしれないと思うことが。その傷ついたかもしれないひとを、わたしが悲しい気持ちにさせてしまったんじゃないかと、そしてそこから、逃げていた自分が。


本当はちっとも強くなんてなってないのかもしれない。涙という形できちんと出ていたのに、悲しい から目をそらすために、虚勢を張ることで強くなった気でいたのかもしれない。
優しいということは、強いということは、悲しいを受け入れることなのかもしれない。


真意は分からないけれど、何気なく出た言葉なのかもしれないけれど、長年自分を苦しめてきた自分自身を諦めたくないような気がしてきた。大げさかもしれないけれど、それでも、これからどうやって生きていくべきかを教えてもらえたような気がした。
だって、だってそうじゃないと、美しくないし、悲しいじゃないですか。



この記事内で、大昇くんは他にも以下のようなことを言っていた。

人生が80年だとしたら、子供でいられるのは4分の1しかない。記憶に残っていないような幼少期を除くと、本当に短いんだよね。残りの人生は、全部大人。俺たちは今、いちばん短くて、いちばん濃い時間を生きているはずだから。ここを逃したら終わりだと思っているし、すべての瞬間を大切にしていきたいな

(現行法改正で将来的に成人年齢が引き下げられることを受けて)俺たちが20歳になる2022年には、18歳も成人扱いになっているんですよね。それを3年ぐらい前に知ってから、少し焦っちゃって。18歳の新成人たちよりも精神的に大人になっていないと、なんだか恥ずかしいでしょ


どうしてこんなに達観しているんだろう…?と考えたときに、わたしは思っていたよりも大昇くんのことを知らないんだなあと思った。

最初はクラJ(懐かしすぎて爆発)にいて、おじいちゃん子で、真っ白で、肩幅(すき)で、歌が本当に上手で、オシャレで(でもなんかいつも半袖)、後輩の面倒見がよくて…

MCでみんなが必死に「海」とか「陸」とかでぼやかしているのに「シーは…」とか「タワーオブテラーでさ」とか言っちゃったり…

いろいろな機会で前に出ることの多くなった彼だけれど、その理由はとっても良く分かるし、もしかしたら最大の要因はその観念や意識の高さ、そして、龍我くんも言うように「みんなを支える包容力」、その優しさにあるんじゃないかなと思った。



どこまでもどこへまでも高く大きく昇っていくんだろうな、そんな未来を感じさせてくれる。
優しくないことは悲しいことだということを知っている。
大昇くんは、強くて、優しい。そして、とっても美しい。



17歳。自分より遙かに若い貴方に縋るような大人は、
情けないと呆れられてしまうかもしれないけれど、
恥ずかしいと笑われてしまうかもしれないけれど、
わたしは大昇くんみたいになりたい。

そうして、今度こそ、優しくなりたい。